1. イノシシと人類 その1

イノシシと人類 その1

最終更新日:2010.12.24

リュウキュウイノシシ(沖縄島北部)

リュウキュウイノシシ(沖縄島北部)

港川人と更新世のシカ・イノシシ化石 (当館サークルホールの展示より)

港川人と更新世のシカ・イノシシ化石 (当館サークルホールの展示より)

武芸洞遺跡から出土したイノシシの骨

武芸洞遺跡から出土したイノシシの骨

イノシシは、日本列島では最もポピュラーな野生動物の一種です。沖縄にもリュウキュウイノシシと呼ばれる小型のイノシシが分布しています。沖縄島北部に生息するリュウキュウイノシシについては、沖縄県立博物館紀要31号に松川聖子氏が詳しい記載を行っていますので、ぜひご参照ください。

沖縄のイノシシについては、かつては人が持ち込んだブタが野生化したものと考えられていたこともありましたが、1万8千年前の港川人が発見された八重瀬町港川フィッシャー遺跡では、人骨とともにイノシシ化石が数多く発見され、かなり早い時期から沖縄にもイノシシが分布していたことが明らかになりました。縄文時代の遺跡からも、イノシシの骨はたくさん発見されています。現在、博物館が発掘調査を実施している南城市武芸洞遺跡でも、約6000年前の地層から土器や石器とともに大量のイノシシ骨が発見されました。

一方、更新世の沖縄には、リュウキュウジカやリュウキュウムカシキョンと呼ばれる絶滅種のシカが生息していました。彼らの化石は、県内各地の100箇所以上の産地から発見されています。これらのシカは、現在慶良間諸島に分布するケラマジカとは全く系統の異なるシカで、更新世末に絶滅してしまったと考えられています。ケラマジカは、琉球王国時代に薩摩からもたらされた移入種です。 

リュウキュウイノシシは、現在でも沖縄島や石垣島、西表島に分布していて、狩猟の対象となっています。かつては落とし穴や落とし罠を使ったイノシシ猟も行われていたようですが、現在では犬を使って追い込み、銃で仕留める追い込み猟や、ワイヤーを用いたくくり罠による罠猟などが主流となっています。石垣島で猟師さんにうかがったところでは、捕獲したイノシシは、小型のものであれば一人で担いで運ぶこともできるそうですが、大型のものになると山から下ろすのも一苦労だそうです。

山から下ろしたイノシシは、家の庭や川原などで解体処理されます。私が石垣島で見せてもらったイノシシの解体作業では、(1)イノシシの体表面をバーナーであぶって体毛を取り除き、(2)腹を裂いて内臓を取り出します。次に、(3)四肢(腕・脚)を肉ごと体幹部(頭・背骨・寛骨)から切り離し、(4)四肢骨を肉から取り外します。これによって、右前側、右後側、左前側、左後側の4部位の肉と、内臓、体幹部、四肢骨が得られます。内臓は調理して食べることもでき、特に肝嚢は薬として珍重されています。体幹骨、四肢骨は、小さく打ち割ってダシを取るのに使うそうです。解体のあとは、猟師さんのご好意で、おいしいイノシシ料理を賞味することができました。リュウキュウイノシシの肉は、あまりクセがなくて柔らかく、絶品です。皆さんも機会があれば、一度試してみてはいかがでしょうか?

  • くくり罠で捕獲されたイノシシ(石垣島・♀体長約90cm)

    くくり罠で捕獲されたイノシシ(石垣島・♀体長約90cm)

  • 解体されたイノシシ

    解体されたイノシシ

  • おいしいイノシシ料理(左:ヒレ肉、右:皮付き、上:レバー)

    おいしいイノシシ料理(左:ヒレ肉、右:皮付き、上:レバー)

主任 山崎 真治

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