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イメージの宝庫としての厨子甕



 沖縄では遺体を墓室内に安置(風葬)し、その後親族が骨を洗う「洗骨」が行われていました。洗骨後の遺骨を納める納骨器を、厨子甕(ジーシガーミ)といいます。洗骨習俗は沖縄の他に、奄美諸島、中国南部や台湾、朝鮮半島などに分布していますが、沖縄では納骨器としての厨子甕がさまざまな形や装飾の発達をみせていることが大きな特徴です。ゆえに、厨子甕は沖縄固有の習俗であり、貴重な文化遺産です。
 厨子甕の装飾に利用されるイメージ(図)は、生産地、材質、利用者の社会的地位や居住地などによって膨大な量のバリエーションを生み出しています。例えば、壺屋で作製された陶製の厨子甕の場合、仏教僧あるいは地蔵菩薩を思わせる人物像が、獅子・龍・蓮華などの模様に取り囲まれながら貼り付けられています(写真1)。一方、近隣に仏教寺院のなかった本島中部東海岸から収集されたサンゴ石灰岩製石厨子の胴部には、神女(ノロ)と思われる人物像が描かれ、屋根と胴部中央上に鎮座する龍(?)も、一見すると大蛇と見間違ってしまいそうなほど独特な形態をしています(写真2)。また、左側面の屋根には鳥・ムカデ、胴部には胴体のない魚などが稚拙とも感じられる描写で描きこまれています(写真3)。人生最後の住処となる厨子にあふれるほどの装飾を求めた人々の、その豊かなイメージの世界を垣間見ることができる気がします。

 

主任学芸員 岸本 敬

写真1 1868年銘入り

 

写真2 1867年銘入り

 

写真3 左側面

 

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